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2015.1. 掲載
《エッセイ》ハリウッドにアイデアを盗用された?話
「猿の惑星」という映画をご存知だと思う。1968年の米映画でチャールトン・ヘストン主演。その後何作も続編が作られたヒット作で、2014年にも「猿の惑星:新世紀」が公開されている。その第1作の話である。
宇宙船で不時着した星が、類人猿の支配する惑星だった。主人公は猿たちに捕まるが、何とか脱出しようとする。ラストシーンは有名で、(以下、今さらながらネタバレ注意!)主人公は砂に埋もれかけた「自由の女神」を発見し、この星が実は未来の地球だったことを知る。このおおまかなストーリーが、私が書いた「小説」(猿こそ出てこないが)とそっくりなのである。
私の小説というのは、細部は忘れてしまったが、こんな話であった。
地球から出発した宇宙船が遭難し、苦難の末、たまたま見つかった惑星に不時着する。その星は荒れ果てており、そこでも乗組員はいろいろ苦労するが、なんとか宇宙船のコンピュータを修理し、地球への帰還コースを計算しようとする。ところが、コンピュータが出した答えは、地球は“ここ”だということだった。彼らは、遭難の際に、何時ともしれぬ未来に弾き飛ばされていたのだ。
私はこの「作品」を「発表」した。と言えば聞こえがいいが、ありていに言えば、中学生の時に、原稿用紙数枚の作文を、クラスの文集に載せたわけである。とはいえ、私にとって初めてのフィクションでもあるので、クラスの友人に馬鹿にされないよう、一生懸命考えて仕上げた覚えがある。私自身はこの文集を紛失してしまったが、誰か持っている人もいるだろう。
その後しばらくして映画「猿の惑星」が公開されたが、あまり興味も覚えず、私は見に行かなかった。さらにその後、多分高校生のころ、TVで放送されたものを見て、驚いた。一瞬、「俺のアイデアをハリウッドが盗んだ!」と思ってしまったのだ。
しかしながら、時系列を確認すると、私が「小説」を「発表」したのは中学2年の時だから1967年度。文集の発行日が分からないが、67年の秋だったと思う。「猿の惑星」がアメリカで公開されたのは1968年2月(日本での公開は同年4月)なので、撮影や編集の時間を考えると、時間的にも盗用は不可能だとわかった。逆に、私が映画を見たうえで、自分で考えたかのように小説を書いたわけではないということも証明できるだろう。
その時に思ったのは、アイデア頼りの小説なんて、先を越されれば何の値打もない、思いついたらすぐに作品に仕上げて発表しなければならない、ということであり、自分で思いついたアイデアでも、既に誰かが発表しているかもしれず、知らずに発表すれば盗作扱いされてしまう、それを防ぐには山ほど本を読まなければならない、ということである。そんなことは僕にはできそうにない、やっぱり小説家になるのは無理だろう、堅気の人生を送ろうと、このとき考えたように思う。
なお、最近知ったのだが、この映画には原作小説があり、これは1963年に発表されている。ただし、映画と違い、原作では「猿の惑星」は地球から遠く離れた星で、主人公がなんとか地球に帰ると、地球も猿が支配する星になっていた、という結末だという(wikipediaによる)。私のアイデアと違うので、今さらどうということもないが、安心した。